LED照明技術に関する情報

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LEDの発光原理

LEDの発光原理LEDチップは、P型半導体(正孔が多い半導体)とN型半導体(電子が多い半導体)を「PN接合」した構造で構成されています。そのLEDチップに電圧をかけると、チップ内の正孔と電子が反対方向に移動することで電流が流れ、正孔と電子がぶつかることで発光します。

LEDの発光色

LEDの発光色LEDチップの光は、その原材料の化合物のもつ発光波長によって発光色が異なってきます。(左図 引用:パナソニック電工) 化合物を構成する元素としては、Ga(ガリウム)、N(窒素)、Al(アルミニウム)、In(インジウム)、Ge(ゲルマニウム)、P(リン)などがあります。それらを2種類、3種類、4種類組み合わせによって、「発光色」と「発光効率」が違ってきます。
右図をクリックすると別ウィンドウで拡大画像が表示されます。

白色LEDの発光方式

これらの化合物がもつ発光色の組合せによって実現される白色LEDの発光方式には以下のような方法があります。

  1. 擬似白色LED
    青色LEDによって黄色蛍光体を発光させることで白色を実現するもの
  2. 高演白色LED
    紫色・紫外線を発光するダイオードを使うことで、多色を発光させて演色性を向上させたもの 光の三原色であるRGB(R-Red、G-Green、B-Blue)をマルチチップ方式により白色を実現するもの
  3. 3色LEDによる白色発光

どれも一長一短ありますが、現在の主流は1.の擬似白色LEDです。

白色を実現させる為の青色LEDを作るために重要な元素はGa(ガリウム)ですが、そのものの資源は逼迫していないものの、その産地が中国、カザフスタン、ウクライナに偏在している為、これに依存しすぎることに懸念もあり、他の元素による実用的青色発光ダイオードの開発が急がれています。

白色LED white light emitting diodes

 波長が異なる複数の光を重ね合わせて白色の光を出力するダイオードのこと。液晶パネルのバックライト光源や照明光源,イルミネーションやインジケーターの光源,自動車のヘッドランプ光源など,応用範囲は広い。消費電力が低く,かつ寿命が長いことから,蛍光管や白熱電球を代替する,次世代光源として期待されている。白色LEDの中で,赤色の色味を強めて白熱電球と似た発光色にした品種を電球色LEDと呼ぶ。

 液晶パネルのバックライト光源としては,カラー表示する携帯電話機の液晶パネルのほとんどで白色LEDを用いるほか,より画面寸法が大きな液晶パネルのバックライト光源として需要が広がっている。例えば,白色LEDをバックライト光源に使うノート・パソコンは,モバイル用途では2010年にほとんどの機種が白色LED化し,14型以上の液晶パネルを使う機種では2010年末までに80%近くが白色LED採用品になるとみられている。最近では液晶テレビのバックライト光源に白色LEDを採用する品種が増えており,薄型化かつ低消費電力化の切り札として期待が集まる。韓国Samsung ElectronicsCo., Ltd.や韓国LG Electronics Inc.,ソニー,シャープなどの大手液晶テレビ・メーカーが主力製品に白色LEDを用いている。

 液晶パネルのバックライト用途とともに今注目を集めているのが,照明向けの白色LEDである。2009年に多くのメーカーが市場投入したLED電球は,白色LEDを搭載している。従来の白色LEDは,蛍光灯搭載品を中心とした照明機器市場を切り崩すには性能不足だった。発光効率が低いために消費電力が大きくなる上,1個から得られる光束が少ないので照明機器が巨大になっていたからだ。このため白色LEDメーカーは,携帯電話機のバックライト光源などに向ける小出力品の開発を先行させてきた。

 だが2008~2009年ころから,発光効率が80lm/W超や100lm/Wを超える白色LEDが続々と登場し,実用時における光の利用効率が一部の蛍光灯を逆転した。これにより,照明向け白色LEDの実用可能性が一気に高まった。LEDメーカーやLED照明の業界団体は,今後も高出力品の発光効率が著しく向上していく開発ロードマップを描いている。

 明るさ当たりの単価は年々安くなってきた。例えば光束1lmを得るための光源の値段を蛍光灯と比較すると,2005年の段階でも白色LEDは約100倍も高かったが,LEDメーカーの生産設備の拡充や歩留まりの向上によって,明るさ当たりの単価で蛍光灯の2倍以内に収まるようになった。

ますます効率が高まる白色LED
ますます効率が高まる白色LED

日亜化学工業における量産品の白色LEDの発光効率の推移。パルス発光の製品を含む。同社のデータを基に本誌が作成。

青色LEDなどと蛍光体材料を組み合わせる

 白色光の作り方には大きく分けて3種類ある。一つは,青色LEDチップの光を蛍光体材料に当てて,白色光を得るもの。もう一つは,近紫外LEDチップが出す光を複数の蛍光体材料に当てて混色するもの。最後の一つは,赤色(R),緑色(G),青色(B)の各LEDを同時に光らせ,混色するものである。

 このうち主流は,青色LEDチップを利用する白色LEDである。蛍光体材料には,黄色蛍光体を使うもの,黄色蛍光体に赤色蛍光体を加えたもの,緑色蛍光体と赤色蛍光体を組み合わせたものなどを使う。例えば黄色蛍光体を使う場合,青色光の一部が蛍光体に当たって黄色の光を出力し,青色と黄色の混色で白色光を作り出す。この場合,赤色の光が弱いため疑似的な白色光となり,色温度も高いために青白い光(色温度が高い光)になる。この課題は,赤色蛍光体を利用することで軽減できる。さらに赤色蛍光体の発光をより強めると,白熱電球に近い光となる(電球色LED)。なお,近紫外LEDチップを利用する白色LEDは,発光スペクトルが自然光に近づけやすいとされる。

引用:Tech-On LED用語辞典 2010年8月11日付

発光効率 luminous efficacy

 光源の効率を評価する指標であり,光源に投入する電力(W)に対する光源から発する光束(lm)で表す。単位はlm/Wである。

 最近の白色LEDの発光効率は100lm/Wを超えている。白熱電球,蛍光灯に続く次世代光源として期待されてきた白色LEDでは,直管型蛍光灯の総合効率と同等の100lm/Wに達するかどうかに注目が集まっていた。なお,発光効率は光源の効率のみを表しており,光源を照明器具に取り付けた状態での器具全体の効率(総合効率)とは異なる。

 発光効率は,外部量子効率を視感度(光に対する人間の目の感度)で示した数値である。外部量子効率とは,LEDに流す電子の個数(電流)に対して,LED チップやパッケージ外に出てくる光子の個数を割合で示したもの。青色LEDチップと蛍光体を組み合わせた白色LEDにおいて外部量子効率は,内部量子効率(LEDチップに流す電子の個数(電流)に対して,LEDチップの発光層内で発生する光子の個数の割合),チップの光取り出し効率(発生した光がLED チップの外へ出る割合のこと),蛍光体の変換効率(チップから出た光が蛍光体に当たって異なる波長へ変換される割合のこと),パッケージの光取り出し効率(LEDや蛍光体からの光がパッケージの外へ出る割合のこと)の掛け算で決まる。

 発光層で発生する光子の一部はLEDチップ内で吸収されたり,あるいはLEDチップ内で反射され続けたりするため,LEDチップ外に出てこない。このため,外部量子効率は内部量子効率よりも低くなる。発光効率100lm/Wの白色LEDの場合,投入した電力の32%しか光エネルギーとして外部に出力されない。残りの68%は熱エネルギーに変わってしまう。

今後3年間で100lm/W向上

 発光効率は,2003年ごろまでは1年に数lm/Wずつとゆっくり向上してきた。発光効率の向上では,蛍光体やパッケージに変更を加えるのではなく,チップ技術の改良に注力していた。具体的には青色LEDチップに使うGaN系半導体結晶を形成するMOCVDでの結晶成長技術を改善するといった地道な工夫が多かった。 

 その後,2004年からは向上ペースが1年に10~20lm/Wに高まった。これにより,2004年の50lm/Wから2008年の100lm /Wへと,4年間で50lm/W向上した。このような発光効率の向上ペースを実現するため,成膜技術の工夫に絞っていたチップ技術の改善を,LED製造プロセス全体に広げるように大きく見直すようにした。さらに,チップ技術の工夫に加え,蛍光体の改善にも取り組み始めた。

 今後,LED各社は2008年に100lm/Wに達した発光効率を,2010年には140~170lm,2011年には150~200lm/Wに高めていく。すなわち,発光効率で新興のLEDメーカーに先行していこうとする実績のあるLEDメーカーは,平均で1年に30lm/W強,3年間で100lm/W の向上を目指す。発光効率の上限が250lm/W程度といわれている中で,LED各社はその限界にどこまで近づけるかに挑戦する。

 この限界に挑戦するため,LEDメーカーは最新のチップ技術,蛍光体技術,パッケージ技術を総動員する。チップ技術では,従来に引き続いて内部量子効率と光取り出し効率を向上する。蛍光体では,変換効率の向上に加え,蛍光体での乱反射による減衰の抑制に取り組む。新たに導入するパッケージ技術では,材料や構造を改善して光取り出し効率を高めていく。

 このようにチップ,蛍光体,パッケージの各種技術を同時に投入することにより,従来トレンドを上回るペースで発光効率を向上させ,照明向け市場の立ち上げ前倒しとバックライト向け市場の急拡大に対応する。

68%は熱損失
68%は熱損失

発光効率100lm/Wの白色LEDにおけるエネルギー変換の内訳を,シミュレーションした結果である。白色LEDは蛍光灯と同等以上の発光効率を達成したとはいえ,投入した電力の 32%しか光エネルギーとして外部に出力されない。残りの68%は熱エネルギーに変わってしまう。このシミュレーションは,直径5mmの砲弾型白色LED に62mWを投入したときのもの。白色LEDは,青色LEDチップと黄色蛍光体を組み合わせて白色光を得ている。(図:日亜化学工業の資料を基に本誌が作成)

引用:Tech-On LED用語辞典 2010年8月12日付

ドループ現象 LED droop

 ドループ現象とは,チップに大電力を投入するとLEDの発光効率が低下する現象である。単位光束当たりのコスト削減に寄与する技術として,LED各社が注力しているのが,ドループ現象の抑制である。この現象を抑制できれば,同じチップを使いながら,大電力を投入して光束を増やせる。このため,一定の光束を得るためのチップ数を減らし,単位光束当たりコストを削減できる。

 このドループ現象の抑制は,以前から米Philips Lumileds Lighting Co.などが熱心に取り組んでいた。そして現在では,日亜化学工業やドイツOSRAM Opto Semiconductors GmbHなど多くのLEDメーカーが注力するようになった。LED各社は,投入電流で1A,投入電力で3Wといった具合に,ドループ現象が顕著になる電流や電力の領域を,従来に比べて約3倍に引き上げようとしている。

 LED各社とも,ドループ現象の発生メカニズムやその抑制方法の詳細を明らかにしない。しかし,チップの発熱や電流集中など,ドループ現象と関連するパラメータが複数あるとの指摘が出ている。例えば,大電力を投入すると,チップからの光の発生量が増えるとともに発熱も増える。この発熱がチップの内部量子効率を悪化させて,ドループ現象を引き起こすことが考えられる。このため,ドループ現象の抑制には,放熱性の高いパッケージ構造を採用して,大電力を投入してもチップの温度が上昇しないようにする工夫が有効とみるLEDメーカーが複数ある。また,LEDチップ内を流れる電流密度が大きくなると,ドループ現象が起きやすくなるという指摘もある。

“ドループ現象”を抑制
“ドループ現象”を抑制

単位光束当たりのコスト削減手段としてLED 各社が取り組みを強化しているのが,“ドループ現象”の抑制である。

引用:Tech-On LED用語辞典 2010年8月13日付

標準チップ/大型チップ regular chip/large chip

 青色LEDや白色LEDで標準チップといえば,パッケージ内に収めているLEDチップ寸法はおおよそ一辺200~300μmである。正方形や長方形など,用途によって形状が異なる。例えば,小型液晶パネルのバックライト光源に使う白色LEDには,長方形型の青色LEDチップを搭載することが多い。

 標準チップに対し,チップ寸法が1mm角と面積が標準チップの10倍という大型チップもある。さらに,大型チップと標準チップの中間の大きさである「ミディアム」と呼ばれるチップも増えてきた。

 かつて標準チップは投入電力1Wを超えるような照明や大型バックライト向けのLEDには利用せず,そのような用途では大型チップを使ってきた。しかし最近では,標準チップを多数個実装して明るさを稼ぐ方法(マルチチップ・タイプ)が目立ってきた。照明用途で現在最も多く使われる投入電力1W級の品種から,投入電力10W超の品種まで実現しており,大型チップを用いる方法と競争を繰り広げている状況だ。LED電球でもマルチチップ・タイプが用いられており,例えば東芝ライテックが2010年1月に発表した品種では56個を1パッケージに収めた白)の不快色LEDを用いている。

 マルチチップ・タイプと大型チップ・タイプはそれぞれ一長一短がある。使う側の照明器具メーカーやユーザーから見ると,マルチチップ・タイプは白色LED間の色バラつきの少なさや放熱面の広さが長所だ。LEDチップには,いまだに発光波長のバラつきがある。

複数チップの重ね合わせでバラつき低減
複数チップの重ね合わせでバラつき低減

大出力白色LEDの実現手法には,1mm角といった大きな青色LEDチップを使う手法と,0.3mm角程度の小さな青色LEDチップを複数個まとめて1 パッケージに収める方法がある。小さなLEDを複数個使うと,パッケージに封止する青色LEDチップの発光特性がバラついても,それぞれのチップの発光スペクトルを重ね合わせるとパッケージ間で差が出にくくなる。

引用:Tech-On LED用語辞典 2010年8月10日付

hyperLEDEL(LEDライン照明害虫効果について

hyperLEDEL(LEDライン照明害虫効果について
  1. 一般論としては、「LED照明は、蛍光灯と比較すると虫が寄り付きにくい」と言えます。 = 特に、ユスリカ対策にはなる。
    • 昆虫は右図のように、波長300~400nmの光に反応して集まる傾向がある。
    • 蛍光灯の発行スペクトル(水色の線)は左図のように400nm以下の波長の光を出しているので昆虫が集まってきやすい。
    • 一方、LED照明の場合、左図の白色ダイオードの発光スペクトラム(黒色の線)が400nm以上の波長なので、蛍光灯と比較すると虫が寄り付きにくいといえる。
  2. さて、カメムシの場合ですが、カメムシの一種のチャバネアオカメムシ成虫は、400nm(昆虫一般では350nmがピーク)の反応が強いようで、一般の昆虫と比較するとLED照明でもカメムシは寄ってくる可能性はありそうです。 (引用:千葉農総研センター)
    但し、現在、利用されている蛍光灯と比較すれば、400nm近辺の発光強度は蛍光灯より低い為、虫が寄り付く程度は低いと想定されます。
  3. 一口に「昆虫」といっても、右図のように波長の嗜好性に幅があるので、虫の種類によって光源への寄り付き度は様々なようです。

LED素子の要素技術開発に関する参考情報

LED素子の要素技術開発に関する参考情報(PDF形式:800KB)

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